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<<アメリカン・スプレンダー>>
〜 AMERICAN SPLENDOR 〜

コミック

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東京都内は、ヴァージンシネマズ六本木ヒルズにて、上映中!
その他の地域は、オフィシャル・サイトをチェック!

主人公は、ハービー・ピーカー、実在の人物です。
彼は、オハイオ州クリーブランドの病院事務員として、
安い給料で、書類の整理に明け暮れる中年男。
腹もちょっと出かけているし、頭も寂しくなってきたし、猫背だし、
不安神経症というか、強迫神経症的なので、しょっちゅう眉間にシワを寄せてる、
冴えない中年男。

決して頭が悪いわけではないのに、病院の書類係という、 退屈な雑務仕事をし、
それで得るわずかな収入のほとんどを、 唯一の趣味の、ジャズのSP盤の収集と、
コミック収集に費やす、おたっきーな日々。
そんなことだから、2度目の妻ともうまくいかず、
ストレスからか、声まで出なくなったというのに、
無情にも、「自殺する前に出ていくわ!」と、妻は出て行ってしまいました。
ハービーの人生、今やどんづまり!

そんなこんなで、鬱々していたある日、病院の書類の中に、
クリーブランドで生まれ、そこで死んでいった男のカルテを見て、 一念発起。
自分を取り巻く日常を、コミックの原作として書き始め、
友人、ロバート・クラム(後のコミック界のカリスマ!)に作画を頼んで出版したら、
「アメリカン・スプレンダー」は、あっという間に評判になったのです!
しかも、在庫の問い合わせをしてきた熱心な読者と、あっという間に結婚?!
ハービーは、表現手段を手に入れただけでなく、 人生のよきパートナーまでゲットして、
幸せいっぱいかと言うと、そうは問屋がおろさないのが人生。

それは、彼が描く、皮肉なタイトルの、日常を描いたマンガ、
「アメリカの輝き(アメリカン・スプレンダー)」にも、 ぶっちゃけられている通りです。
せっかくゲットした、恋女房とも、意見が合わず、ケンカばかりだし、
同僚の不思議な行動にも、驚嘆するばかり。
ハービーもそうだけど、レコード収集する奴の根性の曲がり方には、 畏れ入るし、
スーパーのレジで並ぶ時だって、うかうかしてはいられません。
だって、どの列に並ぶかは、平凡な人生にとっては最大の関心事ですから!
うっかりユダヤ系マダムの後ろに並ぼうものなら、 いつ自分の番がくるかは謎です。
ハービー自身も、ユダヤ系のくせに、と言うか、だからこそ、
ケチで、やたら細かいことにこだわる、 ユダヤ系マダムを見つめるまなざしが、
二重の意味で辛辣で、思わずクスクス笑っちゃいます。

しかも、この映画のおもしろいところは、ハービーを演じるのが、
俳優のポール・ジアマッティだけでなく、 本物のハービーも登場しちゃうし、
コミックの中のハービーも登場することなんです。
つまり、一人の人物を、三人が、少しずつズレた感覚で、演じていくのですが、
そのタッチが、まさに「アメリカン・スプレンダー」というコミックの、
妙なおかしさと、ぴったり当てはまるから不思議です。

だから、病気のことや、人生が抱える深刻な問題が浮上しても、
皮肉が辛辣になり過ぎることはないし、 ユーモアがあっても、ベタベタしないし、
ドライ過ぎることもありません。
まるで、部屋のスプリングのゆるくなったソファーで、パジャマのまま、
だらしなく寝転がっているような、安心感まで感じられるのです。

そんな風にくつろいで、ハービーを眺めていると、
彼は、ただのおたっきーな変人ではないことが、ゆるゆると 分かってきます。
けっこうやさしいところもあって、いい奴だし、 普通に、寂しがり屋でもあるんです。

「精神的成長なんて信じない。でも、幸せになりたい。」
と、ポツンとつぶやく姿に、思わず共感しちゃう頃には、
あれ?何だか、わたしに似てない?って、
つい思ってしまって、愕然としたりして・・・。

そう言えば、あの汚い部屋は、わたしの部屋とよく似ています。
収集癖はないけれど、いつの間にか、溜まってしまった 大量のCDやレコード、
雑誌に本。
ちょっと変わった友達もたくさんいるし、 自慢じゃないけど、人生のパートナーはなし。
そんなもん、無理してつくる気はないけれど、
今より、ほんのちょっとマシな生活をしたいし、 幸せになりたいって思っているのは、
確かです・・・。

あらあら、すっかりハービーのペースに乗せられて、
平凡な生活が、けっこう光り輝いているのに気づいたりもして、
生きてれば、いいこともけっこうあるじゃん。
まだまだ人生、捨てたもんじゃないぞって、
ゆる〜くハッピーな気分になること、請け合いです!

                                             2004.8.16.

                                    −writing by 吉田 妃呂−

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