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<<ボウリング・フォー・コロンバイン>>
〜Bowling for Columbine〜 

アメリカ人は、単なるアホなのか?

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熊みたいなヒゲをはやした、太ったおっさんが、
ノースダコタ州のノース・カントリー銀行に入っていきます。
ここでは、『口座を新規に開くとをプレゼント!』というキャンペーンを展開中。
太ったおっさんは、気鋭のジャーナリスト、マイケル・ムーア
彼は、このアホみたいなキャンペーンが、本当なのかを調べるため、
カメラ持参で、アポなし取材を開始します。
窓口で応対したのは、笑顔の素敵な中年女性。
営業用のスマイルのまま、
「ええ、本当ですよ。カタログから選べます。地下金庫に500挺ありますよ。」
と明るくお答えになる。
ムーアが口座を開くと、次は審査に入ります。
この銀行は、消火器認可店でもあるので、その場で審査ができるのです。
審査用紙には、「精神障害と判定されたことがありますか?」 という質問事項が。
これはどういう意味かとムーアが尋ねると、
その女性は、犯罪に関する精神障害でなければオッケーですよ、とお答えになる。
「つまり、普通の精神障害ならオッケーなんですか?」と問い返すと、
「はい、そうです」とにこやかにお答えになる。
彼女のイヤミのない即答の明るさに、ムーア監督も思わず吹き出します。
そして実際、ライフル銃を手に銀行を出てきたムーアが、
ガッツ・ポーズを決めると、音楽スタート。

このオープニング・シーンだけで、完全にやられてしまいました。
ヤジ馬根性だけじゃない反骨精神、真実を追究するシンプルなパワー、
そして何よりも、ユーモア!
ドキュメンタリー映画を見て、これほど笑って、考えさせられ、怒りに震え、
静かに涙を流した映画は、たぶん初めてです。

この映画のテーマ、つまりムーア監督が知りたかったのは、
「なぜアメリカは銃による事件が、こんなに多いのか?」です。
一年のうちに、銃で殺された人の数を、各国と比較すると、
ドイツ           381人
フランス         255人
カナダ          165人
イギリス          68人
オーストラリア       65人
日本            39人
アメリカ      11,127人!
ケタ違いのナンバー1です。

その理由として、アメリカ誕生からの闘いの歴史にある、と言う人あり、
テレビ・ゲームやアニメが悪い、という言う人もいて、
怪しいロックなどのサブ・カルチャーがいけない、銃規制に問題がある、
いや、メディアに問題があるんじゃないの?
と、大人は勝手なことを言い続け、責任転嫁するばかり。
それにしても、よく耳にするこれらの原因は、本当なのかしら?
気が遠くなるほどの長い間、血塗られた歴史を繰り返してきたヨーロッパの 数字は、
上に挙げた通り、驚くほどの低さです。
日本だって、相当危険なアニメをバンバン垂れ流しているじゃないですか。
しかも、銃所持率がアメリカと同じか、それ以上に高く、失業率も高いカナダでさえ、
165人という、驚異的な数字の低さなのです。
この数字の違いは、何を指すのでしょう?
もしかしたら、「アメリカ人はガンマニアなのか、あるいは単なるアホか?」
これが、ムーア監督の素朴な疑問でした。

そして、衝撃的な事件が起こります。
1999年4月20日、コロラド州の小さな町で、
二人の少年が、朝6時からボウリングをやった後、 コロンバイン高校に乗り込み、
銃を乱射し始め、12人の生徒と1人の教師を殺害し、自殺したのです。

この事件を軸に、ムーアは、銃社会になってしまった本当の理由を 探し出すため、
大人が挙げる理由の一つ一つを、丹念に取材し始めます。
ハード・ロック歌手、マリリン・マンソンから、アニメ制作者、
コロンバイン高校で息子を殺された父親、俳優であり全米ライフル協会会長の
チャールトン・ヘストン、果てはお隣の国、カナダのティーン・エイジャーや、
政治家へのインタビューを、アポなしで敢行するのです。
その中から次第に浮かび上がってくる、アメリカの貧困層の絶望と、
普通のアメリカ人の心のうちにある、 「恐怖」の大きさに、胸をつかれます。

ラスト近く、コロンバイン高校で撃たれ、
今も銃弾が体内に遺されている、高校生二人と共に、
その時の銃弾を売り、事件後も販売し続けていた、大手チェーン・スーパー
「Kマート」に出向き、もう銃弾は売らないという確約を得ようと試みます。
その願いが実現し、高校生と握手する時の、ムーア監督の少年のような笑顔を見る時、
この監督の、人としての誠実さに打たれると共に、
本当の武器は銃じゃない、行動することだよ、という声が聞こえるようでした。
今という、病んだように見える時代に、絶望したり、無気力になることなく、
無骨だけど、正々堂々と闘っているアメリカ人がいる、
それを知るだけでも、勇気が出る映画です。

※マイケル・ムーア監督の本、「アホでマヌケなアメリカ白人」も、柏書房より発売中!

                                             2003.2.6.

                                    −writing by 吉田 妃呂−

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