◆◇◆Save Our Souls 我らが魂を救え!◆◇◆


<<チョコレート>>
〜MONSTER'S BALL〜 

チョコレート・アイスクリーム

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東京都内は、銀座シャンテ・シネ、渋谷シネ・フロント、新宿文化シネマ、新宿スカラ他で、公開中!
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セックス・シーンが、胸に突き刺さる映画です。
心を通わせたい、心の傷を癒したい、自分の罪の深さも、何もかも忘れたい。
一時だけでいい、許される時間がほしい。
そんな切実なセックスに、心の内側を爪で引っかかれるような 痛みを感じました。

アメリカの南部ジョージア州で、
州立刑務所に務めているハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)は、
人種差別主義者で、表現手段として、暴力と権力しか持たない父親から、
その偏見と仕事を受け継ぎ、自分を押し殺し、父の奴隷として生きてきました。
ハンクの息子、ソニーもまた、ハンクと同じ仕事をしていますが、
心やさしく、偏見もなく、しかも感性が柔らかかったために、
ハンクのように、感情を遮断することができず、
父からの愛情が得られないことに、一人孤独に悩んでいました。
そして、黒人の死刑囚、マスグローヴの死刑執行の日、
任務をうまく遂行できなかったソニーは、父ハンクにこっぴどく責められ、
その翌日、ハンクの目の前で自殺してしまうのです。

ハンクは自殺されて初めて、息子の存在の大きさと、
父としての自分の情けなさ、嫌悪感、罪の深さに直面し、
仕事も辞めて、生活を変えようとします。
ただ一つ変えなかったのは、深夜レストランに立ち寄り、
チョコレート・アイスクリームとコーヒーを飲む習慣でした。
そのレストランで働き始めた、疲れた黒人のウェイトレスが、
もう一人の主人公、レティシア(ハル・ベリー)です。

彼女は、死刑囚であるマスグローヴの妻。
夫が服役していた11年間、低賃金でキツイ仕事をしながら、
女手一つで息子を育て、身も心も擦り切れていくだけの毎日を送ってきました。
息子は父の不在と、疲れ切った母との寂しい暮らしからの逃避か、
チョコレート・バーばかり食べ、過食症で、
まだ小学生なのに、86キロもの肥満児になってしまいました。
そんな息子がチョコを食べているところを見つけては、すぐに手を上げ、
「太ったブタ」とののしる彼女。
レティシア自身も、アルコール依存症で、酒が手放せない毎日です。
孤独で、ギリギリの生活の中、さらに悲劇がおしよせてきます。
夫が処刑された後、激しい雨の夜、レティシアの息子が、
車にひき逃げされ、あっけなく亡くなってしまうのです。
そこへ通りかかり、車に息子を乗せて病院に連れていってくれたのが、
レストランでチョコレート・アイスクリームを食べる客、ハンクでした。

しばらくしてから、ハンクはレティシアに、息子の自殺を告白します。
「俺はいい父親じゃなかった。息もできない苦しさが、分かるかい?」

絶望の果てで出会った二人は、喪失感を共有し、傷を舐め合うように、
肉体を通してその孤独を癒そうと、互いの肉体を求めます。
孤独の淵にいる二人のセックスは、欲望を満たすだけのものではなく、
心が最後の水を求めるような、切ない音を伴ったものでした。
それは、痛みと絶望と悔恨で、もう何も感じない心に、肉体を通して、
互いのいたわりだけが、静かに伝わってくる時間でした。

体を重ね合わせることで、感情が静かに互いの間を流れ始め、
少しずつ、共鳴し合うのを感じ、お互いを本当に必要とするようになっていく時、
二人は、耐え難いほどの心の飢えにも、気づくようになります。
自分たちが、これまでの人生で、どれだけ愛情を必要としていたか、
そして、愛情を与えなければならなかったのか。
けれども、最も愛を注ぎたい子供は、もうこの世にはいません。

人生は時に、過酷です。
そして、本当に過酷で、悲惨なのは、
その運命を自分のこととして、引き受けられないことです。
二人が、互いに溺れることなく、真の意味で、共に生きようとし始めたその時、
レティシアは、ハンクが自分の夫の刑を執行した男である事実に、気づきます。

そこからラスト・シーンまで、セリフはほとんどありません。
繊細な緊張感と、やり場のない激しい憤り、そして声も出ないほどの心の痛み。
ハル・ベリーの表情だけの演技は、
アカデミー最優秀主演女優賞にふさわしく、心を強く揺さぶります。
愛というのは、およそ愛とは呼べない感情をも、丸ごと包み込んでいるからこそ、
美しいのだと、思いしらされる瞬間でした。
苦く深い、大人の愛の物語です。

                                        −writing by 吉田 妃呂−

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