◆◇◆Save Our Souls 我らが魂を救え!◆◇◆


<<ゴスフォード・パーク>>
〜GOSFORDPARK〜 
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<<8人の女たち>>
〜8 femmes〜 
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前回に引き続き、今回も2本立てでご紹介いたします。
しかも、どちらも超大作、出演者の顔ぶれも豪華なら、殺人事件が起きるのも同じ。
殺されるのが、館の主人であるのも同じなら、
テーマは犯人捜しではなく、"人間なるものの不思議"に迫るのも同じ。
でも、テイストは、まったく違うのが、おもしろいところ。

まず、巨匠ロバート・アルトマン(76歳)の『ゴスフォード・パーク』は、
1932年のイギリス、貴族社会が舞台。
大富豪のマッコードル卿の別邸、「ゴスフォード・パーク」でパーティーが催され、
そこにゲストが、それぞれの召使いも連れて、ぞろぞろ集まってきます。
登場人物だけでも、軽く20人を越える、アルトマンお得意の群像劇です。
公式サイトには、階上人階下人の相関図があるので、
それをプリント・アウトして、持参した方がいいかしら?と思ったけれど、
そんな心配は、無用でした。

これだけの出演者がいながら、階上人と階下人の区別はもちろんのこと、
それぞれの個性や、この館での役割が、完璧に描き分けられているからです。
しかも、その完璧さが鼻につかないどころか、見事なまでのクールさで、
さらっと見せてしまえることが、まず不思議に感じた点です。
アカデミー脚本賞を受賞したので、脚本にその謎が隠されているに違いないと、
身構えてチェックしていたのですが、いつの間にやら、
アルトマンの世界に、どっぷりはまって、溺れてしまったのでした。

さて、内容ですが、自分のことを神だと信じている、階上人と、
その召使いである、階下の人々との間には、目には見えないけれど、
きっちりとした境界がございまして、
領分を侵さないかわりに、わがままと敬意との間で、微妙な距離感を保ちつつ、
階級社会という檻の中で、全員が平和に共存しています。
そして、牢獄には、牢獄特有のお楽しみもつきものでして、
それは、セックスと、金と、それにまつわるゴシップ。
でも、さすが上流社会。
下世話なゴシップにも、不道徳とか、偽善とか、貴族的な退廃という、
高級な香水が、振りかけられております。
ここら辺は、ヘレン・ミレン、マギー・スミス、マイケル・ガンボン、アイリーン・アトキンス、
エミリー・ワトソン 、などなど、 そうそうたるイギリスの名優たちの見せどころ。
皮肉、憎しみ、嫉妬、哀願、脅し、たかりという、ドロドロの感情があっても、
卑しさが、微塵も感じられないところは、さすがです。

そして殺人事件が起こり、その犯人と、殺されるに至った経緯が分かる中で、
なぜ、このがっちりした牢獄の均衡がくずれたのか、に気づかされた時、
アルトマンの人間観察の深さと、皮肉の毒にチクリとやられ、
よたよたと、映画館を後にしたのでした。

そして、もう一つの殺人事件が起こる、『8人の女たち』は、
出演女優のスゴさに、まず、圧倒されるはずです。
カトリーヌ・ドヌーブ、エマニュエル・ベアール、イザベル・ユペール、
ファニー・アルダン、ダニエル・ダリュー、フィルミーヌ・リシャール、
ヴィルジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ。
ちょっと、公式サイトを覗いて見てください。 この顔ぶれだけで、卒倒しそうでしょ?
しかも、驚かされるのは、それだけではありません。
この一癖も二癖もある女優たちを、歌って、踊らせるんです!
ドヌーブに、歌って踊ってくださいって、あなた言えます?
それを実行した監督は、『まぼろし』でも紹介した、
フランス期待の新人、フランソワ・オゾン。

舞台は、1950年代のフランス。
クリスマス・イブの朝、 大邸宅の主人が、何者かに背中を刺された姿で発見されます。
容疑者は、その妻(ドヌーブ)、妹(アルダン)、娘二人(ルドワイヤン&サニエ)、
義母(ダリュー)、妻の妹(ユペール)、メイド二人(ベアール&リシャール)の、
8人の女たち。
互いが互いを疑い、探り合う中で、彼女たちのとんでもない秘密が、
次々とあぶり出されてくるのですが、 おもしろいのは、この8人の女性たちに、
往年のハリウッド映画の、ヒロインのイメージを重ねているところ。
しかも、ヘアースタイルからモードに至るまで、完璧につくり込んでいるのに、
何ともキッチュで、それがまた、粋でおしゃれに映るんです。
これはもう、謎解きなど関係なく、女たちの秘密を楽しみながら 眺める映画だと、
すぐに分かりました。

でも、そうそう安心して、見てはいられませんのよ。
なぜって、8人の女たちの、駆け引きやら、挑発が、次々に投げかけられて、
女優たちが演じる、女の多面性に、圧倒され、たじたじとなってしまうからです。
わたくしも一応、"女なるもの"の端くれなので、
女のズルさ、かわいい純情、非情さ、泥くささ、巧妙な嘘の涙、
乾いた情熱、刹那的な破壊力、やけくその底力、というか、
全部なかったことにできる、都合のいい知性(?)、そして恐くてキュートな素顔まで、
丸ごと見せつけられて、身に覚えのあるわたくしとしては、
お尻がむずむずして、逃げ出したくなるのです。

つまるところ、
「女は、自分がいちばん好き。この世でいちばん大事なのは、わ・た・し」
なのです。
自分の人生をこれほど謳歌できる、女という生き物を目にしたら、
唖然とするでしょうね、貧弱な概念にしがみつく殿方は。
『おまえらを愛し、守ってきた、この家の主人のことを、どう思ってるんだっ!』
って、怒り出すかしら?
それとも、この監督と同じように、女はかくも素晴らしいと、
あれだけの女優を出演させて、一緒に遊んでしまえるかしら?
鬼才フランソワ・オゾン、35歳。恐るべし。

この冬休み、両方ご覧になって、人間なるもの、女なるものをご堪能あそばせ。
でも、一日に見るのは、一本まで。
二本見たら、胸焼けいたします。毒にあたって、歩けなくなるかも?
くれぐれもご用心のほど。

                                               2002.12.28.

                                        −writing by 吉田 妃呂−

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