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<<おばあちゃんの家>>
〜The way home〜

おばあちゃんより、サンウへ

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東京都内は、岩波ホールにて公開中!
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『シュリ』や、『猟奇的な彼女』など、エンターテイメント映画に勢いのある韓国から、
またまた、すばらしい映画が届きました。
でも、今回ご紹介する「おばあちゃんの家」は、娯楽大作というより、
心に静かな風が吹き抜けたり、透明な清水が染み込んでくるような映画です。

ストーリーは、シンプルそのもの。
ソウルに母親と暮らす7歳の少年、サンウは、
離婚して、仕事も見つからない母親に、 山奥の田舎の村に連れて来られます。
そこは、母親が17歳の時に家出した村で、
年老いたサンウの祖母が、 たった一人で、ボロボロの家に暮らしていました。
母親は、都会で困り果てた挙げ句、捨てた自分の母親を頼って、
仕事が見つかるまでの2ヶ月間、息子を預けに来たのです。
そんな祖母への土産は、下着と栄養剤でした。

サンウのために持ってきたものは、たくさんの肉の缶詰と、
コカ・コーラ、ゲーム機、その他おもちゃ類です。
「この子には、これだけあれば、大丈夫だから」
若い母親はそう言うと、一泊もせずに、 さっさとバスに乗り、
都会に戻ってしまいました。
これまでのサンウの暮らしぶりが分かる、 ちょっとかわいそうなシーンです。

ところがサンウは、文字も読めず、口のきけないおばあちゃんを、
ハナから馬鹿にし、あいさつをしないどころか、
おばあちゃんが頭をなでようとすると、"汚い!"と短く吐き捨てるように言い、
手を引こうとすると、殴ろうとするのです。
さらに、「バカ!」、「まぬけ、ばぁさん」と平気で呼び、
「ちっ」と、本当に馬鹿にしたような舌打ちまで、生意気にやってみせます。
壁にまで、「バカ」といたずら書きをするし、
おばあちゃんが作ってくれた、ご飯もキムチも食べないし、
夜も寝ないで、ゲームをピコピコやってるし、
しまいには、畳の部屋の中でも、平気でローラー・スケートで遊ぶ始末!

この都会育ちの悪ガキの、傍若無人ぶりを見ていると、
一つ二つ、はり倒してやろうかと、手をぎゅっと握りしめるはずです。
しかし、当のおばあちゃんは、決して叱りません。
昼寝している間に、かんざしを盗られても、 たった一足しかない靴を隠されても、
怒らないし、叱らない。
おばあちゃんは、何をされても、ほとんど表情も変えず、
ただただ孫のために何かしてやりたいという、まごころだけで接していくのです。

二人が交わす、たくさんのエピソードの中で、わたしの好きなシーンの一つは、
サンウが夜中に、ウンコをするところ。
だいたいよく吠える犬は、弱虫と相場が決まっていて、
サンウも、虫は恐いし、外でウンコをするのは、もっと恐いのです。
夜中、おばあちゃんに差し出された壺に座って、 外で用を足すのですが、
「見るな!」、と怒鳴りながらも、
「行かないで!」、とも言っちゃうのです。
そして、小さな弱虫さんは、 「そこにいてね」、「寝ないでね」、と声をかけ続け、
口のきけないおばあちゃんは、暗闇で小さくしゃがみながら、
うん、うん、とうなづき続けます。
このおばあちゃんの思いが、孫に伝わらないはずはありません。

サンウは次第に、おばあちゃんに心を開き、
互いに許し合い、助け合って暮らす、人間らしい村の暮らしを、
そして人に対する敬意を、7歳の少年も気づき出し、
この我がまま坊主にもできることを、 ちゃんとやっていくようになるのです。

最初から最後まで、ずっと変わらない、おばあちゃんのまなざしを見ていて、
フト気づきました。
おばあちゃんは、 人を決して裁いたりはしないということを。
おばあちゃんの身体は、枯れ枝のように、細く小さいけれど、
その心は、 山や木や、雨や星のある世界と同じぐらい、
大きな、大きな、無条件の愛情にあふれ、ありのままそこにいるということを。
その徳の大きさは、わたしが三度生まれ変わったとしても、
絶対に、身につけることのできない大きさで、
都会育ちの、我がまま娘であるわたしも、うなだれるよりありませんでした。

この映画の監督は、イ・ジョンヒャンという若い女性監督です。
ご自分のおばあさんを思い出しながら、この映画をつくられたそうですが、
わたしも、自分の祖母を思い出し、 もらった愛情がたくさんあるのに、
もう、何もしてあげられないどころか、
「ありがとう」の一言さえ、 伝えられないことを思いながら、
サンウと一緒に、泣きました。

                                             2003.5.7.

                                    −writing by 吉田 妃呂−

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