◆◇◆Save Our Souls 我らが魂を救え!◆◇◆


<<1票のラブレター>>

投票箱

↑オフィシャル・サイトは、ここをクリック!

東京都内は、新宿武蔵野館にて公開中!
その他の地域は、オフィシャル・サイトをチェック!

イランから、またまた、ユーモラスでかわいい映画がやってきました。
監督は、ババク・パヤミ監督。
テーマは、「伝統的な社会の中の、民主主義と選挙」です。
そんな映画のどこが、"かわいい"のよ、とお思いでしょ?

まずね、ファースト・シーンが幻想的です。
ペルシャ湾に浮かぶ、小さくて美しい島、<キシュ島>に、 飛行機が近づき、
落下傘が一つ、荷物を積んで落ちてきます。
それを見つけた島の兵士が、よいしょ、よいしょと運んできます。
中には、手紙と投票箱が。
この日、この島では、4年に一度の議員選出のための、選挙が行われるのです。

朝8時過ぎ、小さな小舟がやってきて、20代前半の若い女性が一人 降りてきます。
彼女は主人公の一人、選挙管理委員です。
若い女性は、兵士を警護につけて、島を回り、投票を集めるため、
はるばる、この島にやってきたのでした。

もう一人の主人公、若い兵士は、「女が責任者なんて!」と不服そうですが、
命令なので、しぶしぶ車を出し、銃をかついで、彼女のお供をします。
最初、彼の横には、白く大きな投票箱がおかれ、
後ろの座席に、若い女性が座りました。

投票は強制ではありませんが、それにしてもまったくうまくいきません。
イスラムの伝統的なこの島では、民主主義は、彼らの生活感覚とは、
まったく異質なもので、受け入れてもらえないのです。

『夫がいないと、投票できない』という女性。
『全能なのは、神だけだ』と言い、神の名を書く人。
たった一日で、島全体を回らないとならないのに、
仕事である、太陽発電の説明をする男もいて、もう何が何やら・・・。
でも、民主主義の理想に燃える彼女は、くじけません。

"選挙には、家畜をふやしたり、水を引いたりする力がある" と説き、
"運命は切り拓くもの、もっといい暮らしにしたいでしょ?" と説得しても、
やっぱり、全能の神に入れるという老人。
それをじっと見守る兵士は、時々、『聞きたいことがある』と言って、
文句を言ったり、からかうような事を言って、口をはさみます。
そんな二人の静かなやりとりが、ユーモラスで、ほほえましいのです。
でも、時間はどんどん過ぎていくし、車はエンストしちゃうし、
票の回収は思うように進まないし・・・、イライラは募るばかり。

『天にきいてみないと』と、無視された村では、投票はしてもらえなかったけれど、
差し入れのパンをもらい、兵士と女性は一緒に昼食を取ります。
さぁ、腹ごしらえもしたし、もう一度元気を出して出発です。
いつの間にか女性は、兵士の隣の座席に座っています。

別の村では、よそから来た女の子が、仲間はずれにされている のを見たり、
夫を亡くした女性が、村を出ていかなくてはならなかったり、
伝統や風習が、弱者をさらに抑圧している村社会の現実も、
若い女性は、目の当たりにして、自分の無力さに気づかされます。
それでも彼女は、未亡人に語りかけます。

"あなたの声を、聞いてもらいたいと思わない?"

そしてついに、船がやってくる時刻になってしまいました。
兵士は、いつの間にか、彼女のひたむきな態度に好意を抱き、
自分も投票すると言い出します。でも、彼が書いた名前は・・・?

これといって大きな事件もなく、ただ票を集めて黙々と歩き回るだけの映画ですが、
彼女がこの島にもたらした波紋と、彼女にも起きたはずの心の変化、
そして、兵士の心の変化をゆっくり見つめることで、 こんなことを思いました。

彼女が理想として掲げる、民主主義の理論は、
身近な誰かを思いやったり、
助け合おうとする、やさしい気持からスタートしたはずだし、
いろんな考えを切り落として、新しい一つの考えを押しつけるんじゃなくて、
みんなで考えながら、互いを受け入れることでもあったはずだよね、と。
そんなことを、キシュ島を舞台にした美しい映像と、
ゆったりした時間の中に身をゆだねながら、考えるのでした。

ラスト、「おっ!」と、思わず声を出しちゃうような映像もあったりして、
この映画スタッフは、全員が楽しんで、このシュールな映画をつくっているな、
なかなかやるなぁ、とにっこりしながら映画館を後にできる、いい作品でした。

                                             2003.2.21.

                                    −writing by 吉田 妃呂−

戻る




[HOME]
MAIL ←吉田妃呂への
メールはこちらへ!