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<<女はみんな生きている>>
〜 Chaos 〜

海辺の家

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人はなぜ、結婚するのかしら?
自分とは、まったく異なる他人と暮らすことは、
忍耐と寛容の精神を養うためには、役立つだろうけれど、
自由を手放してまでの、特別な何かを手にしている人、
つまり、幸福な結婚をしている人が、あまりに少ないと感じるのは、なぜ?
と、スレっからしの中年女は、いつも思うのです。

この前も、テレビでイラン映画を見ていたら、
古亭主の「紅茶をくれ」 という呼びかけに対し、古女房が、
「あなたは紅茶を飲んでくつろげるけど、 私は疲れるばっかりだから、イヤだ。
 私もずっと働いているのよ!」

と、延々と文句を言い続けているシーンに、たまたま遭遇して、
やれやれ、結婚という夢が醒めた後の小さな戦争と、 不幸な妻の意固地さは、
政治体制や、宗教の違いも飛び越えて、万国共通なのだなぁと、
妙におかしく、不思議な気持ちになりました。

そう言えば、つい最近のこと。
友人夫婦が、子供を連れて、夫の方の実家に帰省した時、
たまたま、両親の介護について、冗談半分で話題になったとか。
その時、夫がうかつにも、
『だいじょうぶだよぉ!Hちゃん(妻)が、面倒みるからさぁ〜!』
と、軽〜くにこやかに言ってしまい、
帰宅してから、 あわや離婚か!というほどのケンカに発展しちゃったのでした。

妻の言い分は、『なぜ、自分が面倒をみると言わないのか?』ということ。
いい?私の両親の前で、
『お父さんとお母さんの老後の面倒は、K(夫)がみるから大丈夫!』
って私が言ったとしたら、あなた、どう思うの?

彼女の名誉のためにつけ加えておくと、
夫の両親の介護をするのが、イヤだと言っているのではないのです。
ただ、妻にだけ負担を押しつけ、ダンナが知らん顔しているということが、
愛の誓いを立てた夫の態度とは、到底、受け入れられないのですね。
ある意味、浮気をする以上に、結婚を踏みにじる、裏切り行為とも思えます。

生活の底辺で、誰にも評価されない仕事から、
スルリと逃げようとする男の小狡さを、目の前で見せつけられると、
女は、ど〜んと、絶望的な気持ちになり、相手への愛は急下降するばかり。
そして、冷静に考え始めるわけね。
「この結婚、この男で正しかったのか?」 と。

「結婚」や「家族」が、人生の歓びや、支えになる反面、
その存在が、女性にとっては、生きていく道を閉ざす、 牢獄にもなりうることを、
たぶん、ほとんどの女性が承知しており、それを賢く避けるために、
どれほど多くの女性が、知恵をふり絞って、夫や子供をてなづけていることか!
(恐らく、男性にとっても同じでしょう。)
日夜奮闘し、時に絶望し、玉砕する女性もいれば、
和解の道を地道にさぐる努力家もいるだろうし、知的な駆け引きを楽しむ者、
力技でねじふせる強者もいるでしょう。
そして私のように、ハナから諦め、違う道を模索するモノグサ女も、きっと、いるはず。

さて、前フリが大変長くなりましたが、
今回、ご紹介する映画、「女はみんな生きている」は、
<結婚生活>の夢と現実を主軸にした、コメディ映画の歴史に、
彗星のごとく登場した、上質のエンターテイメント作品です!

仕事を持ちながら、家庭も支えてきたフランス人の主婦、エレーヌと、
男尊女卑の徹底したイスラム系家族から逃げ出したのに、
組織の手で売春婦にさせられたノエミとが、偶然、出会い、協力しあって、
「女を馬鹿にし、奴隷のように扱い、苦しめるだけしか脳のない、カス男」
徹底的にやっつける復讐劇で、女性にとっては、痛快な映画なのですが、
さらに、奇想天外なストーリーと、速い展開で、ドキドキ、ワクワク、
男性だって、存分に笑って楽しめて、お腹いっぱいになることうけあいです!

けれども、この映画、無能な男をやっつけて、スカッとするだけの、
単純な、コメディ映画ではありません。
それは、映画の後半、二人の女性の復讐によって、 彼女たち自身が受ける、
痛烈なパンチにも感じられるし、
また、女たちが、静かに海を眺めているシーンの、
一人一人の表情からも、感じられるのです。

仕事も、力も、金も、未来も、知恵もつけた現代女性が、
勝ち取ってきたものを携えて、これから、どこへ向かおうとしているのか、
さて、私は、これから、どこに行こうとしているの?
と、鏡を覗き込むように、自問しないではいられない、
不思議な余韻の残る、奥深い作品なのでした。

                                             2004.2.5.

                                    −writing by 吉田 妃呂−

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