◆◇◆Save Our Souls 我らが魂を救え!◆◇◆


<<シャンプー台のむこうに>>
〜BLOW DRY〜

はさみのタトゥ

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東京都内は、日比谷シャンテ・シネで、2/3まで(水曜、女性1000円!)

舞台はイギリス、羊で有名なヨークシャーのキースリー。
ある男と女が出会い、素直で純朴な男の子(ジョシュ・ハートネット)もできた。
でもこの男女、平凡なカップルじゃない。実は、自慢の腕がある。
かつて全英ヘアドレッサー選手権で、2連覇した伝説の美容師なのである。

ところが10年前、3連覇の挑戦を目前に、妻が駆け落ちしちゃった!
しかも相手は、その時のヘア・モデル、サンドラ!つまりなのね。(へっ?)
この状況、どう考えても、男として立つ瀬がない。
3連覇の夢が断たれただけでなく、妻を女に寝取られちゃったなんて!
人ごとだから笑ってられるけど、我が身にふりかかるとなると、
おかしみがある分、ちょっと深刻。というか、かなりの脱力。

以来10年間、元亭主は、キースリーでしがない理髪店のオヤジとなり、
酒浸りの毎日で、息子からも、情けない父と思われている。
駆け落ちした二人は、ご近所でカットサロンを経営してるけど(あらっ!)、
当然、絶縁状態。

そこへもってきて、全英ヘアドレッサー選手権が、
な、な、何と、田舎町、キースリーで開催されることになったから、さぁ大変!
元妻が、「もう一度、みんなで出場しましょう」と、提案してきたのだっ。
というのも、実は元妻、ガンが再発し、(ありゃ)
もうどんな化学療法もきかないところまできてしまった。
そんな彼女の最後の願いは、もう一度、家族の絆を取り戻して おくことだった・・・。

みなさん、ちゃんと話についてきてますね?
妻が女と逃げた上、ガンで余命いくばくもないときた。
でもって、一人息子は、宿敵の娘に恋しちゃって、 ちょっとしたロミオとジュリエット。
さらに、全英選手権に再挑戦して、家族の絆を取り戻すだとぉ?
もう、話題てんこもり過ぎ!
これだけの話題がいっきに展開されると、普通ドタバタになるはずだけど、
全体がキュッと引き締まって見えるのは、脚本の力と俳優たちの勝利です。
(脚本は、男性ヌードで一発当てようとした男達の話『フル・モンティ』のサイモン・ボーフォイ。)
何より、監督、ヘアデザイナー他、すべてのスタッフの視線が、
死を目前にした、元妻の投げかける、暖かくて強い視線と一体となっているので、
少々ムリなストーリー展開にも、ふむふむと、妙に納得しながら ついていけます。

母親であり、元妻であり、駆け落ちした女性の恋人でもある、一人の女には、
もう時間がない。
自分がしてきたことに、後悔はないけれど、バラバラになった家族のことだけが心配。
そんな彼女に、今できることは、たった一つ。
調子のいい話しではあるけれど、彼らが自分を通して、 新しい家族をつくりなおすこと。
自分と、元夫と、息子と、今の恋人と。
風変わりだけど、互いを必要とする家族になれるかもしれない。
そうしたら、安心して、その輪から抜けていくことができる。

家族であることは、人生の諸問題の種でもあるけれど、
自分が、この世に生まれて、誰かとつながっているという実感を
いちばん感じさせてくれる人達でもある、ということ。
それが生きていくために、どれだけ力になるか、
死が確実に近づいている彼女には、よ〜く分かっている。
だから、どうしても伝えたい。私たち4人は、もう一度、心のつながりを持てるのだと。
心のよりどころがちゃんとあれば、後はみんな一人で生きていけるから。

葬儀場で死体相手のカットの練習や、羊相手のヘア・ダイ、
コンテストでのバカバカしいまでの斬新なヘア・スタイル、
上の毛だけでなく、下の毛までセットしちゃう、ちょっとした ギャグも満載。
コンテストのはちゃめちゃぶりも、自分を飾ることの情熱も、
すべてがお祭りみたいに生き生きしててステキ。
深刻なストーリー展開だったはずなのに、もう、手放しで笑えます。
そして、あっと驚くラストのヘア・スタイルは、 ぜひあなたの目で楽しんで!

(元夫は、「ダイ・ハード」の悪役で有名になった、アラン・リックマン。
 元妻は、「ネル」のナターシャ・リチャードソン。
 元妻をひっさらう、かっこいい女は、「ミュリエルの結婚」以来、 私が大好きな、レイチェル・グリフィス!
 オフィシャル・サイトでは、 ジョシュ君のコーナーも充実してるよん。)

                                        −writing by 吉田 妃呂−

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