若々しく乱暴で、残酷なのに切ない、そんなロード・ムービーが、
メキシコから届きました。
無邪気で、元気で、セックスのことで頭がいっぱい。
けれども、大人と子供の狭間で自分をもてあまし、退屈してる17歳の少年、
フリオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)と、テノッチ(ディエゴ・ルナ)。
ハンサムな二人は、子供の頃からの親友同士で、女の子と遊びまくるのも、
親の目をかすめて、マリファナをやってみるのも、
オナニーするのも(?)、
何でもいっしょ。
ただ、彼らの境遇だけが、ちょっと違います。
フリオは母親と姉と暮らす、やや貧しい母子家庭で、
テノッチは、富豪のボンボン。
高校を卒業し、いよいよ彼らの進路も変わる前の、最後の夏休み、
親戚のパーティで、テノッチの従兄弟の妻である、
スペイン女性ルイサ(マリベル・ベルドゥー)と出会います。
ルイサは美しく、スレンダーなわりに、胸はドンとお椀型。
それはそれは、ナイスなプロポーションです。
ちょっと口が大きいけれど、それがまたセクシーで、魅力的な大人の女性。
背伸びしたい男の子たちは、もう一目でノックアウト!
すぐにちょっかいを出し、
伝説の海岸『天国の口』まで、
一緒に遊びに行かないかと、誘います。
もちろん彼らの頭の中は、年上の美しい女性と、ヤルことだけ。
当然、ハナであしらわれますが、驚いたことに数日後、
ルイサの方から出かけようと、誘いの電話がかかってきたのです!
ルイサは、いかにもスペイン女性という感じの明るさと、
開放的な印象を与えますが、
実は、哀しい過去と運命を背負ってきた女性でした。
10歳の時に両親に死なれ、16歳で、育ててくれた叔母を亡くし、
初めて愛した男も、17歳の時に、事故で亡くします。
それから作家の男と結婚しましたが、才能もあるし、愛してもくれるけれど、
浮気しまくるだけの、ただのバカ野郎でした。
そして、また新たな浮気をバカ亭主に告白された後、
運命は彼女に、最も過酷な宣言を突きつけます。
それは、彼女自身の人生が、もうすぐ終わるという宣告でした。
彼女は一人泣きながら、最後に思い切って自由になってみようと、
あの二人の若い坊やを思い出します。
伝説の海岸『天国の口』が、本当にあるならば、そこに行ってみたい。
そこでなら、こんな自分の人生も、ちゃんと抱きしめられるかもしれない。
そんな深刻な悩みを抱えているとも知らず、
少年二人はウキウキと、
彼女と一緒に、『天国の口』を目指し、メキシコを南下します。
旅の途中、ホテルでルイサが一人泣いていると、
テノッチが、シャンプーを借りに入ってくるシーンがあります。
涙を拭きながら、若く美しい体を見て、彼女は、ちょっと
見せてと言います。
テノッチは、照れながらも、腰に巻いたタオルをはずすと、
「あら、左に曲がってるのね」と、涙を拭きながら笑う彼女。
彼らの期待通り、ちゃんとセックスしてあげるし、
ヤルことしかできない彼らに、女性へのまともな接し方まで
指導してあげる、ルイサ。
年上の女性と言っても、まだ30歳前の若い女性です。
そんな彼女に、少年たちの健康的な情熱は、どんな風にうつるのでしょう。
「アモーレス・ペロス」や、「夜になるまえに」などで、注目の彼らの、
若くて、無駄に美しい肢体に、何を感じ、
無邪気でイノセントな彼らを見て、どんなことを思うのでしょう。
愛や家庭を手に入れようとしながら、それが壊れないようにと
気をつかってきたために、
いつの間にか、臆病になり、怯えてしまった自分。
そんな人生を振り返りながら、フトみると、
心も身体も無邪気な青年が、そばにいる。
そして目の前には、どこまでも青い海と空。
熱い太陽。濃い緑。土埃のまう黄色い大地、白い砂浜。
本当に天国の入り口のように、光があふれ、何もないのに、すべてがある場所。
彼女がずっと求めていたのは、魂や情熱を解放して、手放すことでした。
それは、目の前にあり、彼女もまたその一部で、もう彼女の元を去ることもない。
何も守らず、何もせず、ただそこにいればいいだけ。
頭の軽いおぼっちゃん達の、隠された心の悩みや、
メキシコの少数民族の問題など、
それとなくメキシコの現実も織り交ぜながら、
最後の夏が、ゆっくり過ぎていきます。
少年たち二人にとっても、子供時代と決別する最後の夏に
なるのですが、
終わりはまたいつか、
別の意味でのイノセントへ向かう、長い始まりだよ、と言うかのように、
豊かに美しい映像は、いつまでも乾いた熱気で、
彼らを包み込んでいきます。
まるで世界が、一人一人の中にゆっくり閉じこめられ、
熟成される時をいとおしむように。